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おポエム申し上げます

メサイア-暁乃刻- 観劇メモ

大千秋楽おめでとうございます。冒頭から強めのメサイアぢからにやられてしまい、今すぐ椅子に縛りつけてくれ!! と思いながら見ていた。


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人でいることをやめたふたりの男の話。有賀と間宮、有賀といつきが感情のない機械から人間に戻ってきたのとは対照的な在り方でした。

いつ死んでもいいと思っている人間は強い。護のために居心地のいい夢の世界を捨てて現実へ再生した淮斗が、護のためいのちを擲つのは彼にとっては当然のことで、納得してしまうけど、その盲目、迷いのなさが私のような常人にはおそろしい。
見ていて月の兎の説話を思い出しました。彼らなりの信仰に殉じて、炎に身をくべても構わなかった兎と淮斗。質量保存の法則のように、一度失われようとしたものを蘇らせるためには等価のエネルギーが必要で、それが有賀にとっての間宮であり、護にとっての淮斗だったのだと思う。
護は淮斗にとっての光だったから、それが消えてしまうことは自分の体を失うより耐え難いことだったんだと思います。
ただ淮斗も確かに護を照らす光で、淮斗がいない世界をどうやって生きて行けばいいってよろめく護、淮斗失踪の理由を任務復帰してすぐに聞かされていたら自分を許せなかったかもしれないと這いつくばって震える護の激しい執着を見ていると、護は鋼の章で命を捨ててでもこの世界を守りたいというようなことを言っていたけど、本当に彼が守りたかった世界はあくまで淮斗がいるのが前提だったのかなと思いました。
肉体をなくした兎は月へ、海斗は電子の海へ。淮斗は死してなお月として傍にいることで、世界を守りたいという護の意思を支えていく。壊れやすいふたつの卵だったふたりは、ひとつの鋼として結実してしまった。あえてしてしまった、と言いたいような、ぞわっとしたものが残る観劇後だった。

精神ってなんだ……人を人として規定づけるものはなんなんだろう。
人工知能のことを人間だとは私は思えない。少なくとも今のところ。でもエンディングで、何もない空間に微笑みながら拳を触れさせる護は、淮斗の生を心から信じていると思う。
一番怖いメサイアだ。淮斗がこれから肉体的な死を迎えることを護は考えなくてすむ。護はもうほとんど死の世界にいて、人間の道理を飛び越えてしまっているように見える。いびつになってしまった魂の切り口がぴったり合う相手を宛がわれることでどうにか永らえてきた人たちがサクラで、片割れを奪われたサクラは一度壊れてしまう。
だからこそ有賀と護が最後に銃を交換するシーンは、合わせる拳をなくした(ことのある)ふたりが、生にしがみつくためのかすかな糸をそっと確かめる儀式のようで、とても美しかったです。
メサイアでは正義の味方を守ってくれる人がいて、それが重い展開の中での唯一の救いに思えます。ひとりで闘わなくていい物語だなと思っていつも泣いてしまう。

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赤澤さん、廣瀬さんのいない中存在を意識させ続けるお芝居、シリーズを背負う重みだけでない気迫を感じました。チャーチの掟を咆哮するごとく声張り上げるシーンは自然に涙が出てしまった。淮斗の死へまだ感情が追いつかない苦しさと、真意を知ったことで生まれた多幸感のモザイクじみた演技、鳥肌ものだった。「むごいことを……」っていうところ、一切赤澤燈さんの見えない、白崎護が発した声のように聞こえて、怖ろしい俳優さんだ……と思った。
井澤さん、いや~仕上がってる~かっこよかった~メンノンだった!笑 手足の長さがはんぱないので回し蹴りのアクションが映えること! 有賀が急にモテモテになったので動揺した。鋼は配信を見ながらメモ取ってみたのですが、サルベージついでに残しておくと、任務に失敗したサクラを助けられるのはメサイアとして結びついた相手のみで、間宮に自ら手を下すことで、間宮をメサイアとして終わらせてあげられたのではないかと思いました。サクラは戸籍も国籍も持たない不確かな存在で、だけどメサイアだけがお互いの人間としての輪郭を浮き上がらせることができる。
杉江さんはいつみても体術の美しさに惚れぼれしてしまいます。跳んだ時とか攻撃モーションとか、アクションひとつひとつに止めがある気がする。いつきが、おじさんのことは自分でかたをつけなきゃ、と突き進んでしまうところ、男の子っぽいわあ~と思う。そして男ピエタ……膝抱きがあって、メサイアがある。ここテストに出ます!

新人トリオはこれからキャラクターが深掘りされていくのが楽しみ! 一嶋さん好みのペアはまあ万夜さんと小太郎くんだと思うんだけど、じゃあ洵くんのメサイアはどうなるの誰になるの!? 3人がこれからどう変わっていくか見守っていきたい。
長江さん、カテコまではキャラとしてお辞儀も浅めニヒルな微笑みだったのが、ダブルカテコからは深々と頭を下げてらしてギャップ100点。アフトクで「有賀と万夜、船のシーンで銃をぶつけてから袖を出るルーチンをしている(自主的に)」「いつも有賀からぶつけてきて、万夜は自分からはいかないって役解釈。でも大阪ではなかなか有賀がぶつけてこなくて、視界に入るところで銃を上げ下げしてアピールした」ってエピソードを話してくれて、森ノ宮ピロティホールに天からお迎えがきそうだった。危なかった。
沖永さんは体がしっかりしているから立っているだけでかっこいいなあ。戦闘に入るときの構え、何度でも見たい……ご本人はカンパニーのいじられ役としてキャラ立ちしているようで、でもニコニコしながら受け入れているの、もう既にお母さんでした。
橋本さん、よき眼鏡だ。情緒が発達していくのを心待ちにしています。一嶋さんとのご関係が明かされるのも。

ドクターズはチャーチのセキュリティをもっとちゃんとしてください。毎回クリアされるガバガバセキュリティシステム。安里さん、耳慣れない単語も多いセリフなのにすごく聞き取りやすかった。若手くくりの中でもトップクラスではなかろうか。大塚さん渋い~~ドクターが俺のやりたい研究組織の方向じゃないって言ってたのはネクロマンサーに対してなのか、チャーチの研究班としてのことなのか気になる。ドクターチームのバックグラウンドも教えてほしいよ~
伊藤さん、顔が可愛すぎないか? あのラブリーさ、出世の邪魔にならないのか? 周ちゃんとはどういうご関係なのか。名字が名字だし、お母さんつながりでしょうか……あの若さ熱さを変な方向に利用されないでほしい。

山田さん、ビジュアルも演技もなにもかもがよすぎた……思い出すだけでIQが3まで下がるのでコメントを差し控えさせていただきたい。ちょっと調査兵団っぽい(白パンツロングブーツ)。荒木さんは今回限りがもったいなすぎる! 声に深みがあって、高笑いの響き方が聞いてて気持ちいい。チェーカーとサリュート、見た目がややかぶってたから嫌な予感はしていた……残念。
小谷さんのメサ衣、見栄えがする~重くなる話の中でコミカル要素を一手に担ってきゃぴきゃぴする黒子ちゃんの安心感よ。そしてオネエ口調キャラの男モード、テンプレながら、ウッ好き……とならざるを得ない。

ベテランチーム、アフトクのときサーっとでてきて客席を沸かせるだけ沸かせて何もしゃべらず帰っていった。
中原さんのアクション、目と脳がバカになった。まだメサイア見てない人でメガネ参謀が好きな人で戦闘用義肢好きな人、絶対に今回の一嶋さんバトルシーンを見てほしい。
大澄さんがいるだけで舞台が締まる。立ち姿とスラックスの折り目が美しい~っ 志倉さんのやってみろ責任は取るってマネジメントスタイル、しかも後ろでいろいろ調整はしておいてくれる感じ、こんな上司が欲しい! って思うけど、彼の下だと私は全く昇級コースに乗れない気がする。志倉さんの部下がグエンちゃんでよかった。

今回、護が拳を合わせるとき、姿がなくてもそこに淮斗がいた。いつか赤澤さんと廣瀬さんが揃いのメサ衣で舞台に上がることがあって、袖にはけていくのを見送ることができたら、私の中で白崎悠里ペアは本当の卒業をみるのだと思います。

というのを書いて推敲している間に、大千秋楽でメサ衣着た廣瀬さんが花束持って登場されたんですってね。そうしたらもう鐘を鳴らして、盛大な拍手で見送るしかできないなあ。
改めて、大千秋楽、卒業、おめでとうございます。夜を越えていくメサイアたちに幸多からんことを。